とみいよむよむにっき

本のこと、ベランダのこと、おはなし会のこと、日常のあれこれ。

楽しい子ども時代

読み終えた
鉄道きょうだい


『砂の妖精』のようなファンタジーではない。
たとえるなら若草物語のような
子どもが主人公の人間ドラマである。
そういうたぐいの話が好きな人ならきっと、
大好きだろうと思う。
とても面白くてぐいぐい引き込まれた。


『砂の妖精』同様、子どもたちそれぞれの性格が巧く描かれていて、
また、出遭う大人たちの子どもたちに対する姿勢が、
大変好ましい。とても、羨ましく思える。
辛い状況の中でも、明るく、たくましく日々を楽しんで生きている
子どもたちの姿や、お母さんの姿に、胸を打たれる。
楽しいことに終わりがあるように、苦しいことにも終わりがあって、
いつまでも抜け出せないトンネルはないって思わせてくれる。
鉄道を通しての、子どもたちに起こる出来事が、
この話を一本のレールにまとめ上げる感じが、素晴らしい。
E・ネズビットさんは、きっと幸せで楽しい子ども時代を
過ごされたのだと思う。
また、母親としても、とても充実した日々だったのではないだろうか。


感激したのは、最終章「9時15分のおじいさん」とともに、
列車の窓からたくさんの人がボビーにハンカチを振ってくれるシーン。
はっきりと、嬉しいニュースだとはわからないけれど、
幸せがすぐそこまで来ていることを、
直接的にではなく、うまく読者に伝えてくれている。
だから、余計にこちらも高揚してくる。
主人公のきょうだいたちの喜怒哀楽が、
彼らのしぐさや言葉から素直に伝わってくるお話だった。
読み終わって、なぜか『若草物語』を読み返したくなった。


訳者の中村妙子さん。すごく読みやすかった。
とても好みの言葉遣いだ。
結構なご高齢なのだなぁ。
今の子どもたちにはどう響くのだろうか。
『クリスマス物語集』や『サンタクロースっているんでしょうか』
ターシャ・テューダー クリスマスのまえのばん』、
シンシア・ライラントの作品の訳者として知ってはいたが。
あー、幸せな読書タイムだった。