とみいよむよむにっき

本のこと、ベランダのこと、おはなし会のこと、日常のあれこれ。

イツモシヅカニワラッテヰル

空白を満たしなさい

読了。

余韻が残る終わり方だった。
この家族が、この先どういうふうに生きていくのか、
気になる終わり方で、そこは読者に委ねられている。
幸せな結末かどうかはわからない。
そこに、人間の生は、宇宙の時間の流れにおいては
点のようなものであると感じるが、
線は点の集まりで、そこが切れると続きはないと考えると、
たとえ点であっても、存在していることに
意味があるような気がする。

生死というよりは、生き方を考えさせられる本だった。

「分人」という、平野氏の自己の捉え方は、大変興味深い。
だから、『私とは何か』や、『ドーン』は
ぜひとも読もう!と思っている。

私は私である。
けれども、家の中に居る私と、
家族とともにいる私、
仕事をしている私、友達といる私、
初対面の人と会う時の私、
どれも同じであって、全く違う。
それを、多重人格(私であって私ではない)と捉えるのではなく、
私の一部分つまり「分人」と考えることは、
自己を見つめるのにも、かなり有用な捉え方であるなぁと。

仕事が、自分に適していないのではないか?
などと悩んでいた自分にとって、
とてもいいタイミングで出逢った本だと言える。
この小説の、誰かに感情移入出来るかといえば、
それは大変難しいが、それでも、
身につまされる思いがするのは、
自分が子であり、妻であり、母親であり、
また、職場での一人であり…そんな
いろんな場面でいろいろと変わる自分の立場に、
対応できていないからなのかもしれない。