口に出してみよう
この一か月ほど、ちょっと病気をしたり、
仕事が忙しかったり、心が落ち着かない日が続き、
そういう時は、大抵本が読めていない。
読めていないという言い方は間違いかもしれない。
別に、読まなきゃいけないわけでもなかろう。
このところ、忙しく落ち着かなかったから、余計に、
読みたいという気持ちが湧いてきた。
それも、新しい本ではない。
これまで読んできて、自分が好きだと思ってきた本について。
今、一番読みたいと思っているのは
『君たちはどう生きるか』である。
今、903円するのか。
私の手元にある本は、1987年の17刷である。
大学一年の時、教養で哲学の講義を受けた時に、
テキストとして購入した本だった。
当時、定価500円。まだ昭和で、消費税のない時代。
まぁ、薄茶に日焼けした岩波文庫の奥付には、
私の読書した日付が記されている。
'87.11.7-9 '92.1.1-2 '96.8.26-28
これは、(多分)一冊を通しで読んだ記録で、
あちこちの章を幾度となく開いてきた本。
もう、20年近く読んでいないから、
そろそろじっくり読んでみたいなと思う。
と思ったのは、先日ある本を読んだから。
これ。
これを読み進めていくうちに、思い出したのだ。
『君たちはどう生きるか』のことを。
なんだか似ているなぁと。
ケストナーのこの本が1931年に初版が出て、
その数年後、『君たちはどう生きるか』が出た。
世界的に、戦争が起こっていた時代に、
子どもたちに正しく生きるということを
切に願っていた著者の気持ちがひしと伝わる。
そう言うところが似ているのかもしれない。
気がつけば、我が子(下の子)が
コペル君と同じ歳になっていた。
もうすぐ、コペル君を越してしまう。
コペル君の年になったら、この本を読んで欲しいと
思っていたのだが、しまった…。
我が子、岩波文庫は読まないかなぁ。
ポプラ社からポケット文庫で出ているようだから、
そちらの方が読みやすいかもしれない。
あ、タイトルの口に出してみようというのは、
本を読んでいる時に、自分の気になった言葉とか、文章とか、
抜き書きとかしている人もいるんだろうなぁと思う。
自分の本なら、私の場合、プルシアンブルーの色鉛筆で、
ラインを引くのだが、最近はどうもその行為も億劫である。
プチ付箋を使っていた時期もあるのだが、
その文章を書きうつすという行為自体が、
本当に自分の物になる行為につながるのか疑問なので、
最近やっていない。
それで、声に何度も出して言ってみるというのが、
自分の記憶に残る一番の方法であることに気付いた。
そう、ノートも鉛筆も色鉛筆も何もいらない。
それで、口に出して言ってみる。
しかし…口に出せる場所とそうでない場所があるので、
まぁ、結局付箋や色鉛筆に頼ったりするのだが。
私の読書は、最近大変時間の無駄っぽい。
もっと、落ち着いてじっくり構えて読みたい。
そうでない本もあるけれど、やっぱりゆっくり
深く読みたいものである。