とみいよむよむにっき

本のこと、ベランダのこと、おはなし会のこと、日常のあれこれ。

一年では短い

昨日の夜から、朝にかけて読んだ。
あん (一般書)

とても良かった。
どら焼きとハンセン病という、
とっつきやすさと重さが一緒になって、
すんなりと入っていけたのも、久しぶりに
一気に読み上げた理由であったと思う。
児童書に偏りがちな私の読書に、
手に取りやすそうな、表紙でもあった。
どうしてこの本を予約したのだったか…。
たぶんアマゾンさんで、本を探している時に
ふっと現れたのが目に留まったのだ。

話に入りしな、あんを作る手順の描写が、
とても面白くて、話しに引き込まれて行った。
徳江さんの姿が、見えるようでねぇ。
それから、千太郎さんの不安定さが、
とても気になって。

徳江さんへの好意と、
人の偏見、差別視というのに、
千太郎さんが板挟みになっている感じが、
身につまされる。
差別なんてと思いながら、ふとした時に、
偏見を持った見方をしている自分に気が付いて、
それに傷ついたり、立ち直れなかったり、
そういう人は多いだろう。自分もそうだ。

一年間の付き合いは、
それまでの辛い人生、どうしようもない人生を、
何とか浮かび上がらせるものであったことが、
桜の木の一年を通して、
花を咲かせることで描いてあるように思えたが、
やっぱり最後は、別れかぁと、それが辛くはあった。
もう少し、一緒の時間を過ごせたら良かったのにと、
そう思ってしまうなぁ。
でも、千太郎さんの未来が、ぽぉっと
明るく照らされているような、
あたたかい読後感であった。
登場する中学生のワカナちゃんの存在も、
三世代の、一つの家族にまとめるように、
とてもいい描き方だったなぁと思うし、
この子が登場することで、読み手も広がるなぁと感じる。
いろんな年齢の方にお薦めできる本である。

ドリアン助川さんの、他の本も読んでみたくなった。
真面目な方なんだろうなぁと思う。
静かな、でも胸を打たれる映画を見たような、
そんな読書が出来た。

小豆を煮る匂いが広がっている。
どら焼き、焼きたくなってきた。
桜の塩漬けの入ったどら焼き、千太郎さんが、
頑張って作っている姿が見えるようだ。