とみいよむよむにっき

本のこと、ベランダのこと、おはなし会のこと、日常のあれこれ。

25年前

『ワタクシハ』を読了。

べヴィメタルギタリストであるタローちゃんの、就職活動記。

 

羽田氏の登場人物は、何かにこだわっている人が

必ずでてくるのかなぁと思いながら読み進める。

タローちゃんのベルトや、

ギターの練習を欠かさずに毎日数時間…というのも、

こだわりというか、どこか、

それをやらないと、死んじゃうんですか?と笑えるような…

切迫した感じはないのだけれど、どうして、そこに

こだわってるんだろう?と思うような。

 

ここで、ギタリストのタローちゃんは、

就職活動とはいっても、そこの業種にはこだわりがないのである。

しかし、いろいろと真面目に考えてはいて、

そこは、なぜか、冷静なのである。

ヘヴィメタルのギタリストなのに、全然ロックでないのが、

大変際立っている。

ただ、ベルトだけは最後までスタッズベルトなのが、

ロックって言えば、ロックな気もするけど、

内面が、全然ロックではないようにも思える。

しかし、読み進めていくと、社会ってものを正面から受け止めようとは

していない描写が多々あって、

ヘヴィメタ野郎なイメージがどんどん増していった。

 

私が就職活動をしていた25年ほど前のことを、思い出す。

ちょうど、我が子も就職の年で、

この本を読み始める前々日に、我が子は内定をもらっていた。

それも、そこに出来ることなら就職したいと思っていたようだ。

 

そんなこともあって、タローちゃんの就職活動や、

その彼女・恵の就職活動が、

数撃ちゃあたる、ってものではないと、ひしと伝わってきて、

この小説から数年、景気が上向きって、

ほんとなのかな?って少しだけ思った。

 

でも、ちょっと、違うのだよな。

私も、就職活動の時、大手と、地場の数か所受けたが、

大手の内定をもらったことを、大学の先生なんかは

喜んでいたが、内定をもらった中から、

より自分が働きたい場所を選ぶという選択もできた。

タローちゃんの友達が、内定をやっともらったら、

そこが第一希望であったかのように振る舞うことは、

私の学生の頃には、少数派であったのではないか?

 

その点、タローちゃんは、昭和な人のように思う。

内定を3つ貰っても、結局、それからも活動を続け、

自分が納得するところを選んだのだろう。

しかも、週末には東京へ通って、バンドも続けているらしい。

そこが、まじめなんだか??と思っていたところが、

あ、実直な奴なんだな、と確信した瞬間だった。

 

上の子どもが、春からの就職先を見つけていたから、

私も心穏やかに、おおらかに、若者たちの就職活動記を

読んでいくことができた。

そうでなかったら、中に出てくる彼らと共に、

追い立てられるような焦燥感を感じていたに違いない。

 

けれど、結局、就職が決まったからと言って、

そこで終わりでなく、むしろ、そこからがスタートで、

これから、人生、どう転んでいくかわからないのである。

内定をもらっても、より、自分らしい生き方ができる場所を

求めるのが、これからの生き方だろう。

昭和の頃の、終身雇用の在り方は、

今では、少数派なのではないかと考える。

自分が輝ける場所を、出来る範囲で追い求めるのが、

いいんじゃないだろうか。

 

105歳の陸上選手(スプリンター)のおじいちゃんだって、

陸上を始めたのは、85歳ごろからだったと

NHKのニュースで昨日やってた。

囲碁が好きで、友達とやっていたのに、

85歳を過ぎたあたりから、囲碁仲間が

次々に亡くなって、囲碁が出来なくなったって。

そこで、陸上を選択したってところも、面白いのだが、

いつだって、新しいことに、挑戦できる社会なのであるなぁ。

つくづく、平和な国だこと、と呟きながらも、

真の平和か?と、疑いもする。

しかし、新しいことに挑戦してみようと思える人生は、

いいよなぁ~と思うのであった。