とみいよむよむにっき

本のこと、ベランダのこと、おはなし会のこと、日常のあれこれ。

生まれた時代が遅すぎた

新しいおとな
3分の1はゆっくり電車の中で読んだ。
3分の1はのんびり布団の中で読んだ。
残りの3分の1は、図書館の児童コーナーで
じっくり読んだ。

河出書房から出ている石井桃子のエッセイ4冊は、
出た当初から知っていて、
かいつまんで読んではいたが、
今回『新しいおとな』は、最初から最後まで
身を入れて読んだように思う。
石井桃子さんの人生を読むにつけ、
私はきっと、生まれた時代が遅すぎたのだと
そんな気がしてしまう。
石井桃子さんが、お友達だったら…
先生だったら…
そういうありえないことを夢みて、
やっぱり、もう少し早くに生まれていたら…
なんてことを考える。

エッセイのほとんどは、私が生まれる何年も
前のことが書かれている。
それなのに、私はなぜか、そう言う場面を知っているような気がするし、
とても懐かしく思うし、
私もその場面にいたかったと夢見ることもある。
今の時代には、当てはまらないことが
多いはずなのに、でもそこには、今現在に通用する
つまり、時代を超えても変わらぬ普遍的な
人間の考え様が描かれているように思うのである。

はっきりと自分の考える軸を持ち、
自分の感性を信じていらっしゃった石井桃子さん。
傍にいらっしゃったら、どんなだったろう。

図書館の児童コーナーで、この本を読みながら、
なんだか泣きたくなってしまった。
こんなにも前から子どものこと、この国の将来のことを、
心から危惧していらっしゃったのに、
亡くなって7年…エッセイを書かれたころからもう
何十年も、子どもを取り巻く環境は、
石井さんの危惧していらっしゃった状況より、
もっと悪くなっているように思う。

図書館で、子どものいない児童コーナーで、
ウルウルしながら石井桃子さんのエッセイを読んだ。
読み終わって、すぐに返却し、
そのまま一般書の「い」の棚に進んで『プーと私』を借りたのであった。