とみいよむよむにっき

本のこと、ベランダのこと、おはなし会のこと、日常のあれこれ。

富安陽子作品を二つ

小さな山神スズナ姫  (小さなスズナ姫) 盆まねき

もう、随分前の事であるが、
ある講演会で、現代の日本の児童文学者として、
高楼方子富安陽子両氏の名前が挙がった。
高楼方子さんの作品は、特に長編は好きで、
殆ど読んでいるのだが、富安陽子さんの作品は、
まゆや、やまんばあさんを少し。
凄く気になるものはあるのだが、
シリーズになっているものが多く、
どうも手に取るのに躊躇してしまうといった具合。
シノダ!とか、読んでみたいのだけれど、
何冊もあって、手が出ない。
ただ、どれかは読まなきゃなぁと思っていた。

小さなスズナ姫のシリーズは、
中学年向けな感じと、挿絵が飯野和好さんで、
やまんばあさんと似たようなテイストか?と
ずっと思っていたので、読んでいなかったのだが、
これは、面白かった。
笑える面白さというより、子どもが主人公に
感情移入しやすいので、ぐいぐい引っ張られる。
物語の世界中に引きずり込まれる感じ。
けれども、これは、読みなれた中学年向けかと
思わないでもない。
文字の大きさなどは、本当に中学年向けと思われるが、
内容的には、思春期の入り口あたりから読んでも
凄く共感できるのかもしれない。
ただ、ちょっとお父さんの大巌尊が、娘に甘い気がする。
そう考えると、やっぱり中学年なのかなぁ。
個人的には、あまりにスムーズに物事が進んでいくので、
スズナ姫って、優秀なんだなぁ〜と感じ、
ちょっと物足りないなぁとも思った。

『盆まねき』は、気になっていた本だが、
これは、読んで良かったなぁと思う。
初めは、親戚一同が集まるあの懐かしい感じに、
子どもが捉えるような読み方が出来なかったのだが、
主人公なっちゃんが、いとこのお姉ちゃんたちに
置いてきぼりにされたあたりから、
子どもの頃、こういう残酷なとこって、
あったなぁと、子ども時代にひきもどされた。
おじいちゃんや、大叔母さん、ひいばあちゃんの
ほらばなし(?)も、実は、最終章に
どれも繋がっていて、すごいなぁと感じた。
日曜の朝から、泣かされてしまった。
とても、日本人らしい作品だなぁ。
たくさんある、富安陽子作品から、
この『盆まねき』に惹かれたのが、なんでか、
わかったような気がした。
本が、引っ張ってくれたんだなぁって。

図書館や本屋にて、
本を手に取るという行為は、
自分が何を求めているかというその時の精神的なものと、
なにか見えない引っ張られる力が作用しているように
常々思っているのだが、
今回の『盆まねき』は、特にそれを感じた。
これは、ぜひ、小学生に読んで欲しい。
4,5年生の時に読んだら、
なにか、心に留まるものがあるように思う。
作家の、残さなければ!という強い気持ちが、
伝わってくるような作品だったなぁ。
大人も読むべし!!