とみいよむよむにっき

本のこと、ベランダのこと、おはなし会のこと、日常のあれこれ。

風刺なのか

読み応えありすぎ。
対象のめやすは小学高学年からとなっているなぁ。

狐物語 (福音館古典童話シリーズ)

性悪狐のルナール。
フランス中世の動物叙事詩

読みごたえがあったのは、本文はもちろんだが、
解説がね、読み応えあった。
狐物語が、どのように書かれたものかなど
その作品の特徴など福本直之氏による解説。
ショヴォーと、その作品について、山村浩二氏が。
翻訳された山脇百合子のあとがき的なもの。

できれば、本文をよむ前に、福本氏の解説を読んだ方が、
すんなりと、この世界に入って行けるように思う。
でも、これ小学生にはなかなか難しいだろう。

それにしても、ルナールって、ほんと、
悪知恵の効くというか…根っからの性悪である。
読んでいてだんだん、腹立ってくる。
そして、騙される動物たちにも、腹が立ってくる。
しかし、世のなか、そういうことが
はびこってはいるなぁと、思うのである。
でも、こりゃないわ…という展開も。
しかし、この腹立たしさを、
ショヴォーの白黒のイラストが、
なんか和らげてくれるのが不思議。
適度な滑稽さがいいのだ。

この、福音館の古典童話シリーズは、
大人でも十分楽しめるもので、
岩波少年文庫と並んで、私の好きなシリーズなのだが、
どうも、子どもたちはこれに手を出す子が少ない。
このカチッとした装丁といい、
ときどき、さすがに、今は、こんな言い回しを
する人はいないんでは?と思うことも時々あるが、
自分の知らない日本語に出会うというのも、
読書の醍醐味だし、
こんな表現があるんだぁという発見が楽しい。
何十年も昔の文学に触れるという体験を、
感受性豊かな若い時期にするというのも、
自分のキャパシティーを広げられて、いいなぁ。

子どもの本、侮れん…と、改めて思ったのであった。

ただ、世界史なんかを習っていれば、
これも、もっと面白く読めるんだろうなぁと
思わないでもない。
読み手の受け入れ態勢によっては、
ほんとに、単なる性悪な狐のお話で終わってしまいそうだ。
途中で、解説を読んで、そうなのかぁと
思ったところ辺りから(第二部に入る前に読んだ)
もっと、楽しめるようになった。
うむ、また、何年か先に読んだら、
もっと面白いかもしれぬ。

一話一話が短いので、5,6年生のお休みの前に
親が読み聞かせるというのに、むいていると思う。
これ、お父さんに読んでもらうと、
なおいいねぇ。

5,6年になったら、自分で読むのが当たり前
と思われるだろうが、
大人になったって、人の朗読やかたりを聴くのは
面白いし、気持ちが落ち着くのだ。
10歳超えたからって、読んであげるのはダメ!
ってことにはならんと思う。
むしろ、「もう、自分で読んだ方がいい!」と
子どもに拒否られるくらいまでは、
親と子どもの共有時間があってもいいと思うのだが。

それにしても、ルナールの性根の腐ったところ…
これは、逆に生きるための逞しさともいえるだろう。
だけど、我が子が、こんな性根の腐った、
周りから憎まれるばかりの大人になったら嫌だなぁ。

何度、思い返してみても、
ほんと、ここまで悪いとアッパレである。

「ショヴォー氏とルノー君のお話集」を
読んでみたいなぁと思う。