へその緒は切っても
『シズコさん』を読んでいる。
一箱古本市で二年ほど前に購入した文庫。
以前、娘が面白く読んだと、言っていたから、再読している。
佐野洋子さんと、そのお母さんのシズコさんの関係は、
母子という縁を切った方が幸せなような気もするし、
いがみ合い、憎み合っても、母子であることに
変わりはないということを実感する。
私自身、母の娘であり、娘の母であり、
その間にある感情というものは、ただただ幸せな母子ではないような気がする。
家族というのは、なかなか複雑な感情が渦巻くものだ。
へその緒は簡単に切れるが、縁を切ることは難しい。
何を思って、生きてきたのか、解るようで全く解らない。
解りたくもないような気もするし、
自分のことも解って欲しくないって気もしている。
それでも、一生、母子である。
本当は、読書の気分では全然ないのに、
『シズコさん』は、すっと入ってくるから不思議だ。
まだまだ、読書の気分になれずにいる。
眼が活字の上を滑っていく。
自分の頭の中が整理されておらず、落ち着かない状態であることを、
本が教えてくれる。
ただ、『シズコさん』は、なぜだか、深く読めている。