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とみいよむよむにっき

本のこと、ベランダのこと、おはなし会のこと、日常のあれこれ。

覚書みたいなもの

読書の記録

『「生命力」の行方 変わりゆく世界と文人主義』より

 

他者の多様性を認めるためには、

まず自己の多様性を認めなければならない。  98頁

 

普遍的なものを深く届けるには、

直喩的なメッセージではだめで、

やはり暗示的な、平野さんの言葉を借りれば、社会的な問題、

そこから距離を置いた文脈で表現しなければらないと思っています。

                        森達也 127頁

古井氏の小説を読者が難解と感じる時、

その人は恐らく、この身理心理として読もうとしている。 266頁

 

小説家はみんなそうでしょうけど、

今の社会に不適合な人間としての自分という意識は強くあって、

社会への不信も根深くあるわけです。       286頁

 

誤読がありうるということは複数の解釈があって、

しかも、それが最終的に正しいかどうかもわからない。

これが、「読む」ということの一番面白いところではないでしょうか。

                        高橋源一郎 289

 

何か危機的な状況に陥ってイライラさせられると、

本音を言おうとする。 ―中略―  現代にはそんなふうに

言葉と肉体が完全に一致している人間はいないと思っていて、

あらゆる情報に四方八方から貫通されているのが現代人だと思うんですよ。                               293頁

 

あらゆる同一性が怪しくなっていって、一人一人の考えていることが、

てんでバラバラで、一人一人の内面自体もまた複数的で、

バラバラなんだというのがはっきりした。   高橋源一郎 294

 

匿名の無意識のつぶやきがそのまま言語になっていて、

それに共感する人間がこれだけいるんだという事実に恐ろしくなります。

あるいは、そういう秘められるべきつぶやきが

可視化されてもいいんだという巨大な合意に恐ろしさを感じます。

                             高橋源一郎 296

 

個体間に圧倒的な差異があって、しかも社会はその多様性を

十分に受け止めるシステムになってはいない。

どんなにコミュニティが増えても、その一つ一つに浸透している

現代の幸福主義は、必然的に

差異を「優劣」へと変換してしまう298頁

 

無意識にしゃべることって

ものすごく暴力的なんですよね。

                             高橋源一郎 299

 

実際のところ、俺は「勝ち組」だと思って

悦に入ってる人間は馬鹿だと思いますけどー 301頁

 

テロを起こす側の暴力を否定するなら、

僕は社会の側の暴力も否定すべきだと考えるんです。 302頁

 

やはり、思考というのは止まらなきゃダメなんです。

止まらないといくらでも勝手に走っていく。―中略ー

登場人物が自己や社会について思索するやり方はアナログ的で

僕らの思考を一瞬止めてしまいます。それこそが、小説がなすべき

大事な仕事なのだと改めて思いました。    高橋源一郎 306

 

小説で時間の整合性をつけるのが、単なる手続きに思えて

虚しさに取りつかれたのです。       古井由吉 376

 

古井さんの小説はそもそも、断定に対して懐疑を挟みながら

明晰さに近づこうとする、という方法ですよね。   377頁

 

被災者の沈黙の中に何があるか、それを外の人間に

感じ分けられるようにするのが、文学者の仕事だと思います。

                     古井由吉 381

 

自分が現在どういう了見で生きてるかと

考えるのは大事なことです

今はみんなちょっとした災害にも耐えられず、

しかも恐怖反応はかなり不全に陥っている。

一度突き落とされた時の回復力もどうも少ないようである。

                            古井由吉 382

 

キリスト教が一番罪深かったのは、個人一人一人から罪に於いて

苦悩する権利を奪ってしまったことだと思うんです。―中略―

中世末期の神秘家たちは、苦悩を自分に取り戻すことが、歓喜

或いは直接、快感に結びついている。―中略―

書き手も読み手も、個人的な罪なり、逸脱なりを自分自身で

苦しめるというのは、大きな喜びだったと思うんです。  383頁

 

悲しむより恐れる、怯えるということが先に立たなくてはいけない。

今の世の中では生きることはむごいという感覚が失われたのが

問題なのでしょう。            古井由吉 385