とみいよむよむにっき

本のこと、ベランダのこと、おはなし会のこと、日常のあれこれ。

高橋大輔の色

GPFまで、あと一週間。
まだ、ドキドキはしていない。
そのあたりまで仕事が忙しい。
グランプリファイナルの日は、たまたま仕事が休みなのが
嬉しい。まぁ、時間的に仕事があろうがなかろうが、
ちゃんと見ることは出来るのであるが。

今日は昼ちょっと前に帰って来て、
ジャパンオープンの「道化師」を鑑賞。
NHK杯と比較。

フィギュアスケートなんて、リンクを前進で回るくらいしか
出来ないので、技術的なことは何もわからん。
ただ、やっぱり、こう好きだなぁ的な動きっていうのは結構ある。
そして、その好きな動きというのは、
誰々のあれとか、誰々のこれとか、
結構決まっていたりする。
贔屓な選手というのは、その好きっていう部分が、
プログラムのかなりの割合を占めている。
難易度とかは全然わからないのだけれど。
あまり、点数は気にせずに見るよう、心がけている。

多分、作家とかミュージシャンっていうのも、そういうものだろう。
その人たちの、全てが好きだっていうわけではない。
盲目的に、好きだっていうのは、まぁ、
この齢になって、ないな…と思う。

高橋君のプログラムでも、好きなものと、
繰り返し見ないものがあるし、
同じプログラムでも、試合によって、
繰り返し見たくなるものと、そうじゃないものがある。
本も一緒だ。
繰り返し読みたくなるとか、時間が経って、
あ、あれをもう一度…という感覚か。

今まで、高橋君のプログラムで繰り返し見た物は、
もしかしたら、トリノ五輪のFSではなかろうか…と思う。
ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番。
お世辞にも…繰り返し見たくなるような出来では
無かったようにも思うのだが、ど素人の自分が、
フィギュアスケートにはまってしまったプログラムであった。
P・チャンのラフマニノフは、第三楽章で終わるが、
高橋君のラフマニノフは第一、第二楽章が使われていた。
それも、多分自分の好みに合っていたと思われる。
第三楽章の勇壮さではなく、
第一楽章の重厚さと第二楽章の少し寂しげで静かな中に、
なぜかかすかな望みを感じさせるあの曲は、
高橋君にピッタリだなぁと思ったものだ。
今季FSの「道化師」をTVでやっていた
ジャパンオープンを見た時、個人的にはかなり盛り上がり、
キターーーーッツ!状態だった。

しかし、高橋君の調子が悪いこともあってか、
中国杯も、NHK杯も、どうも引き込まれなかった。
正直言うと、高橋君の調子がいまいちであることが、
滑りはじめの彼の表情から窺えたのが良くなかった。
TVでは、顔を映すからなぁ。
ジャパンオープンの演技は良かった。
自信に満ちていて、滑り出しから、かなり期待であった。

とはいえ、今日、NHK杯を見ていたら、
調子が悪いと言えども、やっぱり良いプログラムだなぁと思う。
最初から最後まで曲を感じさせる。
演じきっている感がたまらない。
調子が悪くてこうなら、調子が上がって、滑り込んできたときの
高橋君の演技が今から楽しみでたまらない。
トリノワールドの「道」のように、きっと引き込んでしまうであろう。

今、思うのは、本当だったら四年前、FS二本のうちの一つ、
「オーシャン・ウェーブ」が仕上がれば、
どんなものになっていたろうかということ。
私が、唯一生で見た高橋君のプログラムというのは、
この「オーシャン・ウェーブ」なのだが、
まだ、滑り込んでいなかった夏のアイス・ショーだったけれど、
初めて見て、高橋君の音楽表現というものが、
画一化されたものでなくて、本当にいろんな引き出しを
持っている人なのだなぁと感動したのだった。
それまでテレビで見ていた「オペラ座」とか「スワンレイク」とか、「ロクサーヌ」とか、
そう言った濃いものも、彼らしいと言えば彼らしいが、
「オーシャン・ウェーブ」は、爽やかな風のようだった。
春を連れてやって来る海風のような滑りだった。
彼のスケートは、なんとなく、ぬめぬめした印象なのだが、
「オーシャン・ウェーブ」は、本当にさらりと滑っているように見えた。
曲を演じ分けるというのは、そういうことなのか…と、
思ったもんだ。
「シークレット・ガーデン」や、「チャイコフスキーのピアノ協奏曲」とも
ちょっと違っていたんだよなぁ。
だから、あのプログラムがお蔵入りしたことは、
かなり残念だと思っている。
曲は、高橋君を助けてはくれないかもしれないけれど、
高橋君の演技で曲が盛り上がるはず、と私は思った。

「道化師」は、やっぱり、いろんな経験を積んでこそ、
表現できるプログラムではないか。
若い選手には、表現するのが難しい曲だと思う。
重い曲調だから、盛り上げてはくれない。
恐らく、ミスが続けば、かなり暗ーい雰囲気で演技を終え、沈んだ空気に包まれてしまいそう。
居た堪れない…ってことになりそう。
だからこそ、高橋君が、滑り込んでいけば、
見ているものの琴線に触れるような演技が可能だと思っている。
めちゃくちゃドラマティックなプログラムになると思うんだが。
やっぱりそれは、素人考えなんだろうかぁ。

高橋君のヒップホップやマンボや今季のSPなんかは、
凄いステップ!ひゅぅひゅぅ〜〜♪って気にはなるが、
私には、あーんまり響かない。
まぁ、マンボなんかは、やっぱりテンションあげてくれる
プログラムではあるけれども、
別にフィギュアスケートでそれをやらなくてもいいかも
って気持ちになる。
スワンレイク」は、革命的プログラムなんて言われていたが、
バタバタ感が半端ない。それは、凄いことかもしれないが、
あれは、本当に高橋君の持ち味を生かすプログラムなのだろうか?
高橋君しかできないんだったら、
そりゃ…残して欲しいプログラムである。
でも、それだけが、彼の持ち味ではないはずだ。

ってことで、私の中では、今季のうちに高橋君が
調子を上げて、ぜひともジャパンオープン以上の
「道化師」を見せてくれますようにと、願うばかりだ。

時々、なんだってこなす、色のない俳優がいるが、
高橋大輔という人は、強烈な印象を与えるが、
本当の色はなんもない、どんなスケートだって出来る人
なんじゃないか、ってことを思う。
白いキャンバスに自由に描くってより、
全く無色で、なんにでも染まりまっせって感じの。
そんな彼に、見せてもらえるプログラムは、
競技生活の中ではもう、ほんの少しなのだなぁと考えると、
とても寂しいが、それは彼自身が一番思っていることだろう。
だからきっと、プログラムを仕上げて見せてくれると信じている。

頑張って欲しい選手の一人だ。