変態の感想
『メタモルフォシス』
今更だが、ここは…と思った文章。
―――それも誰かの真似や、受動的に読みとってもらうのではなく、自分自身の言葉で伝えたい。(中略)彼の言葉と自分の言葉は違うのだと、サトウはその身をもってようやく理解することができた。―――
内容はまぁ、理解はできない部分もあるが、
上の文章は、やるせない。
そこまで「自分」に固執している主人公が
愛おしくもあり…でも、やっぱり変態チックだと思ったり。
生への執着心のようにも思えるのだった。
ぎりぎりのところ、彼岸のあっちとこっちを
行き来したいとでもいうような行為に、
読んでいるこっちはくらっと眩暈を感じる。
また、もう一つの作品「トーキョーの調教」も、
変態チックなアナウンサーと、女王様の複雑な心情に、
SMとは、別のところで、人間の必死さを感じた。
生きにくい世の中で、うっぷんがたまって、
それを、どこにどういった形で吐き出していくか、
処世術のようなものだなぁ。
羽田圭介氏の作品は、私にはちょっと若いような気もするが、
でも、真面目すぎるわけでなく、崩し過ぎというわけでもなく、
人間の哀しくも面白い一面が描き易くて、
結構好みかもしれない。
(女性が手に取りやすい本とは、いえないかもしれないが)