とみいよむよむにっき

本のこと、ベランダのこと、おはなし会のこと、日常のあれこれ。

比較のむずかしさ

昨晩、岩波文庫の「雪の女王」と、

岩波世界児童文学集の「雪の女王」の

ストーリーの始まり1ページほどを読み比べてみた。

 

どちらも同じ大畑末吉氏の訳なのだけれども、

全体的な文章量がまず違っていることと、

書き出しから、言葉が違っていることから、

一般向けと児童向けでは、かなり手が加えられていることがわかる。

おそらく、岩波文庫のほうが先なので、

子どもに読み易くするために、訳し直したり、

不要な所を省いたり、簡単に言い直したりされている風であった。

まだ、同じ翻訳者が、異なる読者のために書き直されたものなので、

あぁ、ここをこう言いかえるか…と思いながら読める。

 

昨年、岩波文庫『善悪の彼岸』を購入して、

およよ、これは難解・・・と、手こずっていたのだが、

先日図書館で新潮社の別の訳本を読んでみて、

読み易さの違いにびっくりした。

おそらく、光文社の古典新訳文庫だと、

更に読み易いのだろうなぁと感じる。

http://ecx.images-amazon.com/images/I/51H8YK7QHRL._SX347_BO1,204,203,200_.jpg http://ecx.images-amazon.com/images/I/4127EA64JML._SX328_BO1,204,203,200_.jpg http://ecx.images-amazon.com/images/I/41EbyDNnC0L._SX344_BO1,204,203,200_.jpg

新潮文庫の『善悪の彼岸』は、

竹山道雄の訳というのに惹かれて借りて来たのだが、

全体を通して比較して読むというのは、

時間がどれだけあっても足りぬ…と思い、

結局ほんの少し読んで返却した。

私にとって、竹山道雄という名前は、

ビルマの竪琴』の作者、特別な作家としてしっかり入っている。

なぜなら、『ビルマの竪琴』は、ローティーンの時期、

何度も読み返した本で、ささやかではあるが、

私の一部に、この本の中にある人の生きる道が

しっかりと影響されていると、自覚している。

だから、岩波文庫を熟読した後、

竹山道雄訳も、もう一度読んでみたい。

 

元は、同じ文章のはずだが、時々、

これは、意味が違うようにも読めるなぁというところがあって、

どっちが本当なのだろう?と思うこともある。

こっちの理解力が追いついていないからかもしれないが。

原書はドイツ語だが、もしかしたら、

ドイツ語を英語に翻訳した本を訳したものかもしれない。

そこは、しっかり見ておくべきだったなぁ。

今度図書館で見てこよっと。

 

岩波書店の本は好きだが、やはり歴史を感じるとともに、

言葉の古さということも感じる。

特に、岩波文庫などは…。

だけど、そういう古い文章も読める自分でありたいと

そういう願望も捨てきれない。

 

岩波書店と言えば、きょうの小川洋子さんの紹介は、

『父さんの手紙はぜんぶおぼえた』だった。

http://ecx.images-amazon.com/images/I/61FPXfNNVhL._SX370_BO1,204,203,200_.jpg

図書館で一度借りて読んだことがある。

これは、いいお値段なので、買うのはちょっと思い切りが

必要なのだが、この本の装丁というか、製本というか…

やっぱり岩波書店の本は素敵だなぁと思わせる。

カチッとしてて、本!って感じがする。

残すべき人類の記憶、歴史だと思う。

こういう本を大事にしていかねば。

内容は大変重いテーマなのに、お父さんの手紙が素敵なので、

頁をめくりたくなる本。

父親の愛情に触れ、善と悪の岐路に立たされたとき、

自分の信念を貫ける人間にならなければと強く思う。