とみいよむよむにっき

本のこと、ベランダのこと、おはなし会のこと、日常のあれこれ。

春からの編み物

何をやったらいいのかわからない娘と、

昨日から、やり始めたのは、編み物である。

コットン糸を使って、編めるものをと、

図書館にて、春夏のニットの本を探して、編み始めた。

娘は、チュニック、私は、簡単なカーデガン。

むかーし(独身時代に)買っていた、ちょっとお高かったサマーヤーンは、

娘が気に入ったので譲ったが、

かなり細い糸なので、編み上がるのには随分かかりそう。

編み物歴40年越の私でさえ、編み始めるまでに

気合が必要な…。

でも、これはやめておきなさいとは、言えなかった。

 

夏までに、編み上がるかなぁと、鎖網を編むのにも、

声を出して数を数える娘の傍で、

娘の3倍近い太さのコットン糸で、ザクザク編みながら、

一つ一つ丁寧に編み図の見方や編みかたを教える。

なにせ…鎖網と長編みしか知らないはずの娘である。

編み図見たって、なにがなんだかわからないで、

混乱するのは、目に見えていた。

 

子どもの時、編み物を教えようとしたけれど、

すぐに飽きるし、こっちはこっちで教えるのにイライラするしで、

手芸という趣味は、共通の趣味にはならないな、と、

私の方が、早いうちから投げてしまっていた。

 

そんなツケが、今廻ってきているのであろう。

しかし、あの頃、本当に教えるのが嫌だったはずなのに、

今、解らないと涙ぐむ娘をなだめすかしながら、

一目一目一緒に声を出して、目数を数えている自分がいる。

 

「何かに夢中になることはいいことです」

ターシャの日めくりカレンダーをめくってくれた娘は、

その言葉もちゃんと覚えていた。

私の傍から、離れられない、そんな今のうちに、

娘に伝えられることは、全部、伝えておかねば…

向かい合って、静かに編み物をする。

入院してからこっち、集中力が続かなかった娘が、

1時間近く編み物をしていた。

 

その後、気分が乗ったのか、上橋さんのエッセイも半分ほど一気に続けて読み、

夕食後は一緒に、上橋さんがでていたSWITCHインタビューを見た。

テレビはうるさくて、頭が痛くなると、消していた娘が、

上橋さんの回を1時間近く集中して見ていたのは、

本当に驚きだった。

 

何でも、リハビリのつもりでやってみよう。

できなくてもいいから。

 

昔から、こんな声かけを出来ていたら・・・

そんな風に、後悔する暇もないほど、

娘がすり寄ってくる。

どれだけ不安を抱えているのかと、胸が苦しくなるが、

それを本当に取り除けるのは、彼女自身。

私はただ、彼女の寂しさに寄り添うだけである。

今まで出来なかった、優しさをもって、

接しているつもりだが、果たして、

この夏彼女は自作のサマーニットを着ることができるだろうか。

もしできたら、きっと、ほんの少しでも

自信を取り戻せるのではなかろうか。

ゆっくりゆっくり、一目一目…

気が付いたら、ずいぶん編み進んでいる。

所々、目がゆるんだり、きゅうくつになっていたり、

足りなかったり、増えていたり、思い通りにはいかない。

それでも、やっぱり、編み進んで行く。

編み物も、人生みたいなもんだなぁと感じている。

祈りを込めて、編み進めていこう。