とみいよむよむにっき

本のこと、ベランダのこと、おはなし会のこと、日常のあれこれ。

人間に生まれたから

このところ、私の家事室に、ドンと置いている絵本。

The Story of Ferdinand

もちろん、表紙をこっちに向けている。

日本語版『はなのすきなうし』
はなのすきなうし (岩波の子どもの本 (11))
とても好きだ。
まだ、かたりを始めて間もない頃、
この話を語りで聴いた。
このおはなしを、いつか語れるようになりたいと思った。

しかし、このおはなしは、折角だから、
絵本の絵もじっくり見たい。
実にユーモア満載の絵!
例えば、フェルジナンドのお気に入りの場所である、
―こるくのきのした―
この木には、ワインのコルクの栓の形をした実が
すずなりになっている。
あと、くまんばちの上にすわってしまったがために、
くまんばちにお尻をさされ、飛び上がった
フェルジナンドの表情。
素敵なおはなしに、このユーモアのある絵。
大好きな絵本である。

光吉夏弥さんの訳も凄くいい!
「うしとはいうものの、よくもののわかった
おかあさんでしたので、」
とか、
「だいとうぎゅうしでさえ、おじけをふるっています」
とか
「だれだかごぞんじでしょう?ふぇるじなんどですよ
とか…

声に出して読んでもらうことを前提にして、
訳してあるような気さえする。
このリズム感。

最近、この絵本を読むときのリズム感とか心地よさは、
やはり、巧い翻訳の方がいらっしゃるなぁとおもうことがある。
もちろん、翻訳だけに限らず。

それは、しかし、おそらく、
自分のリズムにあっているということなんだろうなと感じる。

この頃、声に出して読んでの読み易さを感じるのは、
こみやゆうさんの訳だ。

庭にたねをまこう!
『庭にたねをまこう!』
『クリスマスってなあに?』の姉妹編であるこの本、
『クリスマスってなあに?』と同様、
やっぱりいいなぁと思う。
子どもが小さい時に読んであげたかったなぁと思う。
岩波書店のテディ・ロビンソンの3冊も。
このほか、絵本でもマーガレット・ワイズ・ブラウンなど
このところ新刊で何冊も出ている。
こみやゆうさんの訳だと、手を伸ばしたくなる。
安心して読める気がするから不思議である。

こみやゆうさんの選んだ言葉というのは、
どことなく、石井桃子さんとか、瀬田貞二さんとか、
内田莉莎子さんとか、上で挙げた光吉夏弥さんとか、
そういった方たちの言葉を受け継いでいらっしゃる感じが
するのだ。
若い人には、古いような感じがするのだろうか?
でも、とても美しい流麗な日本語だ。
読んでいて、また聞いていて、心地よい。

人間に生まれて良かったなぁと思えることは、
言葉のおもしろさはもちろん、
本という文化が楽しめるということである。

人間に生まれたことを、嫌だなぁと思うことが、
多々あるのだけれども、
人間だからできること、その中で、
残していきたいこと、残していかなければならないことを
よーく見極めて、文化の継承ということを考えたいと思う。