とみいよむよむにっき

本のこと、ベランダのこと、おはなし会のこと、日常のあれこれ。

プロイスラー

大力ワーニャの冒険
読了。

日本に初めてこの本が出たのは、1973年
『大力のワーニャ』というタイトルだったようだ。
ロシアの骨太昔話風。
プロイスラー独特の肉付けをして、
大変面白い冒険物語として完成されたものに。
ワーニャというのが、イワンの愛称であることに気づき、
やっぱり、ロシアの三人息子の三番目といえば、
イワンのばかだわなぁ〜と、
イワンのばかの本も、持っていたことを思い出す。

オトフリート・プロイスラーは、とても不思議な作家だ。
チェコのリベレツ生まれ、ドイツの児童文学者。
ホッツェンプロッツのおじちゃんと言えば、
我が家では子どもたちにすぐに通じる。
今年の2月、亡くなってしまった。
10月には90歳になるはずで…。

ホッツェンプロッツの三作も好きだが、
私はこの作家の本で、最も胸を打たれたのは
今のところこちらの本だ。
わたしの山の精霊(リューベツァール)ものがたり
これは、生まれ育ったチェコのボヘミア地方の
言い伝えである山の精霊・リューベツァールを題材に、
短いおはなしがいくつも入ったものなのだが、
幼い頃の体験や、育った自然環境などが描きやすく
書かれていて、また、自然と人間との調和や、
人間の精神、正義など、考えるきっかけを
子どもたちに与えてくれると思う。
また、歳をとってから、この本が書かれたことにも
児童文学者として、残しておきたいという強い想いが
伝わって来たし、やっぱり、面白いし。

で、『大力ワーニャの冒険』
どうだったかというと、やはり、面白かったし、
いろんな昔話を知っていた作家さんだったんだなぁと
とても思う。
どうして舞台がドイツではなくロシアだったのか、
それはとても気になるところではある。

7という数字、化け物退治、コインの表裏、仲間との出会いと別れ、
そういった、王道の冒険物であるが、
ワーニャがとても魅力的で、また、誠実な若者というのが
いろんな場面に溢れていて、
子どもの頃に読めていたらなぁと思う。
また、下の子が3,4年の頃、読んであげることが出来ていたら…と、
後悔しても仕方がないのだが…。
また、堀内誠一さんの挿絵のおかげで、とてもイメージを描きやすく、
邪魔にならない、ありがたい挿絵だなぁと感じた。

あと、大塚勇三氏の他の翻訳本では感じなかったことだが、
氏のこの翻訳、少し読み辛い所があり、
もうちょっと別な言い方の方がわかりやすいのでは?
と思うところがあった。
それが、ちょっとだけ気になった。
だけれども、あとがきを読むに、新装版が出る時に、
「出来るだけ読みやすく、原作の心が伝わるようにと
心がけました」
とのことなので、私の言葉の問題かもしれない。

ババヤガーが乗っている足が4本あるパン焼きかまどは、
ハウルの動く城を思い起こさせる。
そう言えば、プロイスラーの『クラバート』の表紙絵も、
ハウルの動く城を思い起こさせるのだが…気のせいかな。

この本でワーニャと旅をした私は、
『王への手紙』の旅とはまた別の、
冒険の旅の楽しさを知った。

冒険物語は、男の子のものだけではない。
世の女の子たちよ!ぜひ、冒険物語に手を伸ばして下さい!

で、この旅を終えて、別の旅を求めて、
私は恐らく、自分の苦手分野であろう本に手を伸ばした。
今朝からアーサー王と円卓の騎士』を読み始めた。
サトクリフ…読みたくて、でも挫折するそんな作家の一人。
でも、なぜか、今回は、読めそうな気がする。