とみいよむよむにっき

本のこと、ベランダのこと、おはなし会のこと、日常のあれこれ。

山本周五郎

中学一年生の時、国語を教えていたT先生の声を、
今でも覚えている。
そのころ、習った国語の教科書に載っていた作品は、
T先生が朗読してくださる声で、
焼き付いているものも多い。
特に、『二十億光年の孤独』のような詩の世界。
そして、『鼓くらべ』のような、時代小説も。

温和な先生であった。
でも、時折、厳しさを感じる先生だった。
担任でもなく、部活動の顧問でもなく、
ただ、国語科の先生というだけだったし、
一年生の時だけだったのだが、
先生が朗読する国語の教科書は、
教科書ではないように、感じていた。


『鼓くらべ』は、今読んでも、味わい深い作品だと思う。
いや、今だから深く感じられるものがあるのかもしれない。
光村ライブラリー・中学校編 3巻 最後の一句 ほか?
小学1年生から中学3年生まで光村図書の教科書だった。
『鼓くらべ』は、この光村ライブラリーの、中学校編3に
掲載されているらしい。
山本周五郎の本としては、
松風の門 (新潮文庫)
こちらの短編集に掲載されているそうだ。

音楽(芸術)というものは、人と優劣を競うものではない
そのころは、小説に込められた作者の思いが
わかったような気がしていたが、
気がしていただけで、
なんにつけても競争の、偏差値重視の世の中で。

この頃、この短編小説のことを思い出す。
そして、思い出すとき、必ずT先生の優しく、力のある声がする。

勝ち組・負け組なんて言ってるが、
人生に勝ち負けがあるとしたら、
それは、自分が自分の描く幸せな人生を生きているか
どうか、ということではないか。
他人がどう言おうと、どう思おうと。

あ、山本周五郎の短編集『松風の門』新潮文庫
読みたくなってきたー。