イソップ物語
もう、40年ちかく前のこと。
小学一年生になって、初めて本屋さんへ行った。
自分が住んでいる町には、書店がなかったから。
母に連れられてバスに乗ること30分。
街の本屋で、好きな本を一冊買っていいと母に言われ、
何をきっかけにそれを買ったのかはわからないが、
『にんじん』を買った。
たしか、ポプラ社か、偕成社で、白いカバーに、
にんじんの文字が、赤だったのではないかと思う。
その児童向けのシリーズの中から、夏と冬、
一冊ずつ、買っていたような気がする。
『アルプスの少女』とか、『耳なし芳一』、
『十五少年漂流記』、『キリストものがたり』、
『イワンのばか』など、本棚には、
そういう本が並んでいたように思う。
たぶん、全部自分で選び、母は何も言わずにその本を買ってくれた。
3年生の夏だったか、ずっと同じ出版社の
同じシリーズの本を買っていたのに、
どうしてかそのシリーズとは別の『イソップ物語』を
一度買ったことがある。
そのときのことは、はっきりと覚えていないが、
それまでのシリーズより、かなりぶ厚い本で、
カバーが水色っぽかった。三・四年向きと書いてあって、
それはそれは、たくさんのイソップの童話が載っていて、
とても魅力的に思えたのだろう。
それをきっかけに、それ以降選んだ本は、出版社も判型もまちまちになった。
今思うと、それは当然なのかもしれない。
同じシリーズを1年から6年まで読むってことはないだろう。
文章の内容も、量も、変わってくるはずだから。